東京高等裁判所 昭和61年(行ケ)170号 判決
一 請求の原因一ないし三の事実は当事者間に争いがない。
二 認定判断の誤り第1点、同第2点について
1 成立について当事者間に争いのない甲第二号証の一ないし三によれば、本願発明の特徴は次のとおりであることが認められる。
即ち、ホログラフイツク・マツチド・フイルター技術の有用性は確認されているが、いまだに実用的なシステムができていない原因の中で一番大きな問題点は、その設置精度、再現性にかなりの精度が要求され、特に一つの乾板(記録体)に多数のホログラフイツク・マツチド・フイルターを記録し、照合の時、各マツチド・フイルターを次々に設置するような場合には、単なる機械的な再現性だけにたよつたのでは、ホログラムの設置精度を出すのはかなり困難であることにある。
本願発明は、右の問題点を解決するため、ホログラムと同一の乾板(記録体)上に記録したフレネル・ゾーンプレートと、光点位置検出素子を用いてホログラムの位置ずれを検出し、その位置ずれを補正して、ホログラムの設置精度を出すことを目的とし、前記請求の原因二の本願発明の要旨のとおりの構成により、記録体に記録されたゾーンプレート模様からの光束の集光点位置と基準位置との位置ずれを検出する光点位置検出素子の検出信号に基づいて記録体の移動手段を駆動して記録体を所定位置に位置決めすることにより、記録体上に記録されたホログラフイツク・マツチド・フイルターの位置決めをきわめて正確に、しかも安価に行うことが可能であるとの効果を奏するものである。
2 「光点位置検出素子」は、受けた光のその素子上での位置を検出する機能を有する素子であることは被告が明らかに争わないから自白したものとみなす。
また、「光検知器」が光を検出する素子の総称として使用され得ることは当事者間に争いがなく、成立について当事者間に争いのない乙第七号証(小瀬輝次他編集「光工学ハンドブツク」一九八六年二月二〇日株式会社朝倉書店発行・四九四頁、四九五頁、五一〇頁)によれば、光検知器と同義の用語と解される「光検出器」は、光入力がもたらす情報を信号処理に便利な電機信号に変換するものであり、これを機能的に大別すると単体素子と位置検出能力をもつものとがあることが認められる。
よつて、「光点位置検出素子」とは、光検知器(光検出器)のうち位置検出能力をもつものの一種と認められる。
したがつて、光点位置検出素子を光検知器(光検出器)と称することは誤りではないが、文献に光検知器との記載があることのみからそれが光点位置検出素子であるということはいえず、他にその光検知器が光点位置検出素子である旨の記載があるか、それが技術的見地からみて光点位置検出素子であると理解できる等の事情があつて初めて、記載されたものが光点位置検出素子であるということができるものであることは明らかである。
3 引用例には、引用例の参照符号103で示される光検知器を「光点位置検出素子」と記載した箇所がないことは当事者間に争いがない。
4 成立について当事者間に争いのない甲第三号証(引用例)によれば、引用例には次のような記載があることが認められる。(本判決別紙引用例図面参照)
(一) 特許請求の範囲として、
(1) 複数のホログラムAを記録した記録体と、該ホログラムAに記録された情報を読出すために該複数のホログラムAに選択的に光を照射する手段と、該ホログラムから読出された記憶情報を検知するための、かつ該記録体との相対的位置関係が時間的に変化している検知手段とを有するホログラム記録体にあつて、該記録体上に、該記録体の位置を表示するための位置情報をホログラムBとして記録せしめ、かつ上記の位置情報は前記の相対的位置関係の変化に従い、上記の検知手段に対して相対的に変化した位置に再生することを特徴とするホログラム情報の構成法。
(2) 請求範囲第1項にあつて、ホログラムAからの再生情報はある時間内は記録体と検知手段の相対的位置関係の変化にかかわらず、検知手段に対してほぼ一定の位置に再生せしめ、かつホログラムBからの再生情報は上記の相対的位置関係の変化に従い検知手段に対して変化する位置に再生することを特徴とするホログラム情報の構成法。
(3) 請求範囲第1項にあつてホログラムAに光を照射してホログラムAからの再生情報を検知し始める瞬間および検知し終える瞬間の少なくとも一方を制御するために、ホログラムBの再生情報を検知して得られる情報を用いることを特徴としたホログラム情報の構成法。
(二) 本発明はホログラムに記録される情報の構成法に関するものである。また、運動媒体上に記録されたホログラムの読出し方法に関する。(甲第三号証一頁右下欄一〇行から一二行まで)
(三) 第1図はテープ5上に微小ホログラム51、52などをマトリツクス状(二次元)に配列したものである。このようなホログラムテープは第2図の方法により読出される。すなわちレーザなどのコヒーレント光1をホログラム51に照射すれば再生像9が再生され、検知器10で検出される。………この場合、運動媒体上の所定のホログラムが所定の読出し位置に来た場合のみ所定の光を照射して読出すことが必要となりこのとき、媒体の位置を正しく知る必要がある。(甲第三号証一頁右下欄二〇行から二頁右上欄六行まで)
(四) 従来は第4図に示すごとくホログラムテープの周辺に濃淡の写真模様2が記録され、この濃淡の数をレンズ31、光検知器101などを用いて計数することによりフイルムの位置を知るものである。この方法では次の問題を有するものである。
(1) ホログラムを記録する方法としては濃淡の型で記録する場合にのみ適用可能であり、この場合はホログラムの回折効果は低い。むしろ表面の凹凸、屈折率等の形で記録する位相ホログラムが望ましくこの意味で従来方法は好ましくない。
(2) 媒体のキズ、ゴミなどにより誤動作をおこしやすい。
(3) フイルムの送りピツチに狂いがあると、写真模様とホログラムの位置の対応が狂つてくる。これをさけるためには、ホログラムの配列ピツチがきわめて正確でなければならない。
本発明はこれらの欠点を解消する簡便な方法を提供するものである。(甲第三号証二頁右上欄六行から左下欄四行まで)
(五) 実施例1(第5図)
ホログラムフイルム上には情報を記録したトラツク群61の他のトラツク62を設け、このトラツクには情報のホログラムと同じように微小ホログラムを配列し、このホログラムにフイルムの位置情報を記録する方法をとる。たとえばホログラム51からは情報91を再生せしめ、これを光検知器101でうけるに当たつて、フイルムの位置を検出し、(1)フイルムを正しい位置で静止せしめるかあるいは(2)フイルムが所定の位置に来たときにのみ読出し光を照射せしめる手法をとる必要がある。このためにフイルムの位置がどこにあるかを判断する必要があり、この情報をトラツク62にホログラムとして記録してあり、これにより再生情報92、93を得ることができる。これらは光検知器102、103で検出される。このうち93は単にフイルムの移動に伴い移動する単純な再生光であり、92はこのフイルムの位置をデイジタルコード化したアドレス情報である。いずれか一方の情報が所定の値になるときに所定の情報91を読出せばよい。93(「91」とあるのは「93」の誤記であることは当事者間に争いがない。)は単に位置を知るのみであるが92は今検知した位置がどの位置かをコード化されて検知することができる利点がある。従つてこれら両方はある方が便利であるがこれら93(「91」とあるのは「93」の誤記であることは当事者間に争いがない。)、92は必ずしも両方とも必要としない。このようにすることによりすべてホログラム記録ですみ、位置情報も所定の情報も同一の現像処理等ですませることができ、かつ位相ホログラムにすることができる。(甲第三号証二頁左下欄五行から右下欄一三行まで)
(六) 実施例2(第6図)
実施例1にあつては所定の情報を記録したホログラムと位置情報を記録したホログラムは別々のところに配置されていた。この方法では、所定の情報を記録したホログラムと位置情報を記録したホログラムの位置関係のずれ、およびそれらのホログラムを読み出す光の照射角のずれ、媒体の変形などによる再生情報の位置ずれが生じるために誤動作の原因となる。
これを改良するのが第6図の実施例2である。すなわち各ホログラムにそれぞれ所定の情報91以外にアドレス情報92または位置情報93の両方もしくは一方を記録する方法である。ホログラムはこのように異なる情報を同じ所に記録することができる点が特徴である。
この方法により各ホログラムの所定の情報91を位置ぎめ情報(92または93)がつねに一対一で読出されるために、たとえ、媒体が変形、あるいは読出し光の入射角がずれても位置情報を検知することによりつねに正確に所定の情報を読み出すことができる。(甲第三号証二頁右下欄一五行から三頁左上欄一五行まで)
(七) 実施例3(第7図)
実施例2にあつてはホログラムが所定の位置に来たときに、瞬間的に読み出す方法である。瞬間的に読出すためにレーザー光の出力が大きくなる。(フイルムを移動させ、ホログラムが所定の位置にきたときにフイルムを固定せしめる方法もあるが、この場合は情報の読出しに時間が要る。(甲第三号証三頁右上欄二行目に「時間が異る。」とあるのは「時間が要る。」の誤記と認める。))
この点を改良するためにはホログラムからの所定の情報91がフイルムの移動につれて移動せず、むしろ静止するのが望ましい。このことは従来の方法では不可能であつたが、ホログラムを用いると可能である。第7図はその一例を示すものである。すなわちホログラム51などはフーリエ変換とし、このホログラムに平行光を照射せしめ、再生光をレンズ31で逆フーリエ変換することにより再生情報91はレンズ31の後方焦点に固定して再生される。従つて、フイルム5が移動してもホログラム51をよんでいる間は静止光検知器101で所定の情報を比較的長い時間にわたつて検出することができるため必要とするレーザーパワーは小さくてすみかつ信頼性が向上する。
この際、………(中略)………フイルムの位置を検出し、ホログラムから情報をよみ出し始めるタイミングと終了するタイミングを知る必要があり、そのための一方法として第7図では位置情報92をうける光検知器を102、103のごとく二個配置し、まずこの位置検知情報92が光検知器103で検出された段階からホログラム51の再生情報91を検出し、次に102で検出されたときに情報91の読み取りを終了すればよい。………(中略)………ここで位置情報92としてはその一例として第8図(a)、(b)のごとき光の強度分布をもつものでもよい。(a)、(b)にあつてはそれぞれ中央の最大値、最小値のところでもつて位置ぎめを行えばよい。また(c)のごとくコード化されたものでもよい。(甲第三号証三頁左上欄一六行から左下欄一五行まで)
(八) 実施例4(第10図)
実施例3では情報の読み出し開始と終了のタイミングを知る方法として光検知器を二個用いる方法を示したが、より簡便な方法を第10図に示す。
この方法では位置検出情報として二つの92、93なる位置検出情報を記録再生するものであり、この結果、光検知器103のみ(一個)でよい利点を有する。(甲第三号証四頁左上欄六行から一四行まで)
(九) 実施例5(第11図)
実施例3にあつては所定の情報は第11図の91のごとく空間的にはフイルムの移動に関係なく一定の位置に再生される。これがレンズ31によるフーリエ変換の効果である。この場合さらに異るトラツクのホログラムたとえば52(「51」とあるのは「52」の誤記と認める。)から再生されても同一の位置に情報を再生することができるためトラツクの選択は読出しビームのみの位置をかえればよいことになる。(甲第三号証四頁左下欄一九行から右上欄七行まで)
(一〇) 以上、本発明によれば、運動媒体上に記録したホログラムから所定の情報を読むに当つては、運動媒体上のホログラムの位置が所定の所に来せしめるか、または来た瞬間を知るための位置情報をホログラムとして記録することにより、簡便にかつ正確にホログラム内の所定の情報を読み出すことができる。その具体的な効果を列挙すると、
(1) 位相ホログラムを活用でき効率が増大する。
(2) 精度が向上する。媒体の変化、ビーム方向の変化などの影響をうけにくい。
(3) フイルムのキズ、ゴミなどの影響をうけにくく信頼性が高い。
(4) フイルムの送りピツチが異つてもよいなど作成、読み出しに要する精度が楽である。
(5) 各ホログラムのアドレス信号をコードの形で読み出すことも可能であり、検索が容易になる。
この結果、多量の情報を高速にかつ正確に検索することが可能となる。(甲第三号証四頁右下欄一七行から五頁左上欄一四行まで)
(一一) 本判決別紙引用例図面のとおりの図面(甲第三号証五頁下欄から六頁まで)
5(一) 右4に認定した事実によれば、運動媒体に記録されたホログラムを読み出す場合、運動媒体上の所定のホログラムが所定の読み出し位置に来た場合のみ所定の光を照射して読み出すことが必要であるため、媒体の位置を正しく知る必要があるところ、右4(四)のような従来の方法では、同(1)ないし(3)のような欠点があるので、引用例の発明はこれらの欠点を解消する簡便な方法を提供することを目的とするもので、4(一)の特許請求の範囲に示された構成、4の(五)ないし(九)の実施例1ないし実施例5に示された構成を採用することにより、4(一〇)のとおりの効果を奏するものであることが明らかである。
これを具体的にみると、従来は、所定の情報が記録されたホログラムが記録されたフイルムの周辺に濃淡の写真模様が記録され、この濃淡の数をレンズ、光検知器などを用いて計数することによりフイルムの位置を知つていたが、この方法では、ア ホログラムを記録する方法として、望ましい位相ホログラムを適用できず、濃淡の型で記録する方法のみ適用可能であること、イ 媒体のキズ、ゴミなどにより誤動作をおこしやすい、ウ ホログラムと濃淡の写真模様を同時に記録することができないので、先に濃淡模様を記録したフイルムにホログラムを記録する時にフイルムの送りピツチに狂いがあると、写真模様とホログラムの位置の対応が狂つてくるので、これを避けるためには、ホログラムの配列ピツチが極めて正確でなければならない、という問題点があつた。
引用例の発明は、これらの欠点を解消する簡便な方法を提供することを目的として、4(一)の特許請求の範囲に示された構成を採用することにより、4(一〇)のとおり、(1) 位相ホログラムを活用でき効率が増大する(前記従来技術の問題点アに対応する)、(2) 精度が向上し、媒体の変化、ビーム方向の変化などの影響を受けにくい、(3) フイルムのキズ、ゴミなどの影響を受けにくく信頼性が高い(従来技術の問題点イに対応する)、(4) フイルムの送りピツチが異なつてもよいなど作成、読み出しに要する精度が楽である(フイルムの送りピツチが異なつてもよいなど作成に要する精度が楽である点は、前記従来技術の問題点ウに対応する)、(5) 各ホログラムのアドレス信号をコードの形で読み出すことも可能であり、検索が容易になり、それらの結果、多量の情報を高速にかつ正確に検索することが可能となるという効果を奏するものである。
(二) ところで、右引用例の発明の奏する効果のうち、(1) 位相ホログラムを活用できる、(3) フイルムのキズ、ゴミなどの影響を受けにくい、(5) 各ホログラムのアドレス信号をコードの形で読み出すことも可能であるとの各点は、引用例の発明が、「記録体の位置を表示するための位置情報をホログラムとして記録せしめ」た構成によるものであることは、ホログラムの性質から明らかである。
また、(3)の内精度が向上するとの点、(4)の内フイルムの送りピツチが異なつてもよいなど作成に要する精度が楽であるとの点は、「所定の情報を記録したホログラムの記録された記録体上に、該記録体の位置を表示するための位置情報をホログラムとして記録せしめ」た構成により、所定の情報の記録されたホログラムと位置情報の記録されたホログラムとを同時に同じ記録体に記録させることができ、所定の情報の記録されたホログラムと位置情報の記録されたホログラムの位置の対応の精度が向上し、フイルムの送りピツチの狂いは所定の情報の記録されたホログラムと位置情報の記録されたホログラムの位置の対応に影響せず、ホログラムの配列ピツチを極めて正確にする必要もないとの趣旨であることは、前記4(四)(3)の「フイルムの送りピツチに狂いがあると、写真模様とホログラムの位置の対応が狂つてくる。これをさけるためには、ホログラムの配列ピツチがきわめて正確でなければならない。」との記載及び4(五)中の、「このようにすることによりすべてホログラム記録ですみ、位置情報も所定の情報も同一の現像処理等ですませることができ、」との記載から明らかである。
更に、それらのことからすれば、(4)の内読み出しに要する精度が楽であるとの点は、「所定の情報を記録したホログラムの記録された記録体上に、該記録体の位置を表示するための位置情報をホログラムとして記録せしめ」た構成により、所定の情報の記録されたホログラムと位置情報の記録されたホログラムとを同時に同じ記録体に記録させることができ、所定の情報の記録されたホログラムと位置情報の記録されたホログラムの位置の対応の精度が向上するので、位置情報の記録されたホログラムの再生されたものとその検知手段を一致させる精度がゆるやかでも、所定の情報の記録されたホログラムから読み出された記憶情報と、それを検知するための検知手段との対応関係の精度を維持することができるとの趣旨であると認められる。
(三) 以上によれば、引用例の発明は、「所定の情報を記録したホログラムの記録された記録体上に、該記録体の位置を表示するための位置情報をホログラムとして記録せしめ」た構成により、記録体上の「所定の情報を記録したホログラム」と「位置情報を記録したホログラム」との位置の対応の精度を向上させ、正確にホログラム内の所定の情報を読み出すことができることを特徴とするものであり、位置情報の記録されたホログラムの再生されたものをその検知手段の基準位置に一致させる精度を向上させることは特徴ではなく、むしろその精度がゆるやかでも、所定の情報の記録されたホログラムから読み出された記憶情報と、それを検知するための検知手段との対応関係の精度を維持することができることを効果の一つとする特徴を有するものということができる。
これに対し、光点位置検出素子が、記録体の所定位置からの位置ずれを検出して、その検出結果に応じて記録体を移動させて位置ずれを補正し、所定位置に精度良く位置合わせする、「ずれ補正位置合せ」機能を行うために使用するものであることは当事者間に争いがなく、光点位置検出素子の右のような機能は、引用例の発明の右のような特徴からは必要のないものであるということができる。
6 次に、引用例に記載された各実施例について検討する。
(一) 前記4の(七)ないし(九)及び(一一)の記載によれば、引用例記載の実施例3ないし5は、所定の情報の記録されたホログラムからの再生光を逆フーリエ変換することにより、フイルムが移動していても、所定の情報の記録されたホログラムからの再生光は一定の位置に比較的長い時間にわたつて固定されて再生されるものであるから、要求される位置決めの精度はゆるやかで、光点位置検出素子による「ずれ補正位置合せ」は必要のないもので、右実施例3の位置情報92を受ける光検知器102、103、実施例4の位置情報93、92を受ける光検知器103、実施例5の位置情報92を受ける光検知器103はいずれも光点位置検出素子とは認められない。
(二) また、前記4の(五)、(六)及び(七)によれば、引用例記載の実施例1及び2は、位置情報が記録されたホログラムからの再生情報92、93を光検知器102、103で検出してフイルムの位置がどこにあるか判断し、(1) フイルムを正しい位置で静止せしめるかあるいは、(2) フイルムが所定の位置に来たときにのみ読出し光を照射せしめて、所定の情報91を読み出すものであり、その意味でフイルムの位置決めが必要であることは明らかである。
しかし、前記甲第三号証によれば、引用例には、実施例1及び2がどのような位置決め制御手段を用いるかについて記載はなく、まして、「ずれ補正位置合せ」を行うことの記載はないことが認められる。
また、前記4(五)、同(一〇)の記載によれば、実施例1は、ホログラムフイルム上には情報を記録したトラツク群61の他のトラツク62を設け、このトラツクには情報のホログラムと同じように微小ホログラムを配列し、このホログラムにフイルムの位置情報を記録する方法をとるもので前記5のとおり、所定の情報の記録されたホログラムと位置情報の記録されたホログラムの位置の対応の精度を向上させ、「ずれ補正位置合せ」を必要としない引用例の発明の一実施例であることを併せ考えれば、実施例1も「ずれ補正位置合せ」を必要としないものと認められる。
更に、前記4(六)、同(一〇)の記載によれば、実施例2は、各ホログラムにそれぞれ所定の情報91以外にアドレス情報92または位置情報93の両方もしくは一方を記録する方法を採用するもので、この方法により、所定の情報の記録されたホログラムと位置情報のホログラムの位置の対応の精度を実施例1よりも更に高めることを特徴とするものと認められ、前記5のとおり「ずれ補正位置合せ」を必要としない引用例の発明の一実施例であることを併せ考えれば、実施例2も「ずれ補正位置合せ」を必要としないものと認められる。
右のとおり、実施例1及び2が「ずれ補正位置合せ」を必要としないものである以上、「ずれ補正位置合せ」機能を行うために使用するものであることが当事者間に争いがない光点位置検出素子は、実施例1及び2に使用されていないものと認められる。
7 被告は、請求の原因に対する被告の認否及び反論二1のとおり、「実施例1及び2に記載された位置情報93はフイルム5上のホログラムによつて与えられ、ホログラム52の移動に伴つて移動するものであるから、ホログラムの性質上ホログラム52は集光性のものということができ、したがつて、位置情報93は集光性の光束であるといえる。集光性の光束の最も単純な形態は、点への集光光であり、この形態の光束を位置情報93として用いることができることは明らかであるので、引用例においては、このような光束を用いることを予定しているといえる。このことは、ホログラムの移動に伴つて移動する位置情報の一例として、中央に最大値を持つ光点状の光強度分布のものが第8図(a)に示されていることからも支持される。そして、位置情報93として点に集光する光束を用いる場合には、光検知器103として光点位置検出機能を有するものを用いるのは当然のことであり、光点位置検出機能を有する光検知器として、光点位置と基準位置との位置ずれを検出する光点位置検出素子は周知のものであるので、引用例に「ホログラム52からの光束の集光点に配置され、この集光光点位置と基準位置との位置ずれを検出する光点位置検出素子103」が記載されているとの本件審決の認定に誤りはない。」旨主張する。
しかし、請求の原因四1(四)の(1)(2)中、ある光束が、フイルムの移動に伴つて移動するとの記載があるからといつて、その光束が集光性であることが記載されていることにはならず、第8図(a)のような光の強度分布は、ガウス分布あるいは正規分布といわれ、最も一般にあらわれる分布であり、光学の分野では、集光光の部分のみならず、発散光の部分でも、平行光の部分でも存在すること、いずれの実施例に関する図面においても光検知器上に光点を形成しないように記載されており、引用例図面の第9図、第10図においては、明らかに平行光として示されていることは当事者間に争いがない。
また、前記4(五)の記載によれば、実施例1について、位置情報の記録されたホログラムからの光である93は単にフイルムの移動に伴い移動する単純な再生光であるとされているのみであり、前記甲第三号証によれば、引用例には位置情報の記録されたホログラムからの再生光が光点を形成するとの記載はないこと、前記のとおり引用例のいずれの実施例に関する図面においても光検知器上に光点を形成しないように記載されているのと対照的に、従来の技術についての第4図には、フイルムの位置を知る濃淡写真模様からの光はレンズを通して集光性の光束となり光検知器の位置に光点を形成するように図示されていることが認められる。
右の争いのない事実及び認定事実によれば、引用例においては、点への集光光という形態の光束を用いることを予定しているという、被告の前記主張の前提自体いまだ認められないものというべきである。
更に、被告の前記主張中、位置情報として点に集光する光束を用いる場合には、光検知器として光点位置検出機能を有するものを用いるのは当然のことであるとする部分は、位置情報として点に集光する光束を用いる場合でも、光点位置検出機能を有しない光検知器を用いることができることは明らかであり、右主張部分には論理の飛躍があり誤りである。
以上のとおりであるから、被告の前記主張は認められない。
8 被告は、請求の原因に対する被告の認否及び反論二3(一)のとおり、「引用例には、被位置決め体の位置を検出して所定の正しい位置へ来させるのに、どのような位置決め制御手段を用いるのかについては明記されていないが、被位置決め体の基準位置との位置ずれを光点位置検出素子で検出して、この検出信号に基づいて被位置決め体の移動手段を駆動し、被位置決め体を所定の正しい位置に位置決めする制御手段(ずれ補正位置合せ)が周知であるから、引用例に静止読み出し手段として、「光点位置検出素子103の検出信号に基づいて移動手段501、502を駆動し、記録体5を所定位置に位置決めする制御手段」(ずれ補正位置合せ)が記載されているとの本件審決の認定に誤りはない。」旨主張する。
しかし、ずれ補正位置合せが周知であることは当事者間に争いがないが、他方、フイルムを正しい位置で静止させるために、光検知器が光を受けたとの出力に応答してフイルムを止める方法、光検知に応答してフイルムの制動、減速を開始し、あらかじめ定められた距離の減速移動を許容した後、停止を強制する方法を利用することもできることは被告において明らかに争わないから自白したものとみなす。
したがつて、ずれ補正位置合せが周知であるからといつて、引用例に明示の記載がないずれ補正位置合せが記載されているという被告の主張は認められない。
9 以上のとおりであるから、引用例には光点位置検出素子及び光点位置検出素子の検出信号に基づいて移動手段を駆動し、記録体を所定位置に位置決めする制御手段即ち「ずれ補正位置合せ」をする制御手段は記載されていないものと認められ、これらが記載されているとする本件審決の認定判断は誤りであり、その結果、本件審決は、本願発明と引用例に記載されたものとの光点位置検出素子の有無及び光点位置検出素子の検出信号に基づいて移動手段を駆動し、記録体を所定位置に位置決めする制御手段の有無という相違点を看過誤認し、これらの相違点について判断しないままに本願発明は引用例に記載されたもの及び周知のものに基づいて当業技術者が容易に発明をすることができたと判断したものである。
三 よつて、その主張の点に判断を誤つた違法のあることを理由に、本件審決の取消を求める原告の本訴請求は、その余の点について判断するまでもなく正当であるから認容することとする。
〔編注1〕本願発明の要旨は左のとおりである。
二次元のゾーンプレート模様が記録された記録体と、前記記録体を二次元方向に移動する移動手段と、前記ゾーンプレート模様を照明する照明手段と、前記ゾーンプレート模様からの光束の集光点に配置され、該集光光点位置と基準位置との位置ずれを検出する光点位置検出素子と、前記光点位置検出素子の検出信号に基づいて前記移動手段を駆動し、前記記録体を所定位置に位置決めする制御手段とから成る位置決め装置。(以下本願発明につき本判決別紙本願発明図面参照)
〔編注2〕本件における図面は左のとおりである。
別紙 本願発明図面
<省略>
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別紙引用例図面
<省略>
<省略>
<省略>